- ストックオプションで一攫千金は危険
- ベンチャー企業には何もないことが普通
- ベンチャー企業への転職で失敗しないために
ストックオプションで一攫千金は危険
ベンチャー企業への転職を相談されるときに一番耳にすることが「給料は下がるけど、ストックオプションがもらえるんです」かもしれません。ストックオプションが付与されるから転職するという思考は危険でこのような相談をされる方にはベンチャー企業への転職はおすすめしていません。
ストックオプションとは簡単に説明すると、会社が上場したらストックオプションの行使額と株価の差額が利益になるというイメージでしょうか。行使価格が1,000円で株価が2,000円の場合は差額の1,000円(実際にはストックオプション1個につき100株なので10万円)が利益になるというものです。実際には行使条件や税制などでいくつかの種類に分かれますが、詳細は割愛します。
ストックオプションは確かに魅力的です。実際にメルカリが上場をした際には多くの億万長者が生まれました。ぼくも実際にストックオプションは付与されたことがあり、付与されたときはとてもうれしかった記憶があります。
では、なぜストックオプション目当ての転職が危険なのかということなのですが、結論から言いますと「上場を目指して上場できる会社は一握り」だということです。
実際に上場を目指している会社を数十社知っていますが、この10年ほどで実際に上場ができた会社は2社のみです。ほとんどが「ずっと上場を目指しているといっている状態」か「上場を諦めた会社」「買収された会社」となります。もちろん中には不幸にも倒産した会社もあります。
ストックオプションは会社が上場しなければ「紙屑」です。付与されただけでは金銭的な享受は一切ありません。しかも多くのストックオプションには行使時期が定められており、ストックオプションの付与から10年以内に行使する必要があります。そしてストックオプションの付与から2年は行使制限がかかっているケースが多く、仮にストックオプションの付与から9年目に上場ができたとしても行使制限によりストックオプションの権利が行使前に失効してしまうという悲しいできごとが発生します。
上場すること自体のハードルが非常に高いうえに行使期間もあるということで、「ストックオプションでこれぐらい儲かるから給料を100万下げてもおつりがくる」という考えがいかに危険か理解できると思います。
誤解のないようにもう一度言いますが、ストックオプション自体は非常に魅力的でがんばって成果を出せれば一攫千金の夢も十分にかなえることができます。しかし、ぼくが注意してほしいと思うことはストックオプションを資産と考えて転職することは危険ということです。大金を手にしたと思いきや落ち葉だったということになりかねませんから。
転職するからには上場を目指して全力で会社を成長させるわけですが、上場して利益がでればラッキー程度に考えておくことが無難だと思います。ストックオプションが付与されたからといって億万長者へのチケットが手に入ったと思わないことが大切ということですね。
ベンチャー企業には何もないことが普通
「〇億円調達しました!」「大手の〇〇と業務提携しました!」「アプリが〇万ダウンロード達成しました!」「サービスのARRが〇億円を突破しました!」という景気のいいプレスリリースをよく目にしますよね。安心してください。ほとんどの会社が上場までたどり着けません。
基本的にベンチャー企業は熱量を大切にします。熱量は勢いといい方を変えてもいいかもしれません。この熱量を維持するためには社内向け、社外向け両方に発信し続ける必要があるのです。
ベンチャー企業といってもほとんどが急成長している中小企業です。大手優良企業と比較すると中身が伴っていることはほとんどありません。どちらかというとあるほうが珍しくて何もないことが多いです。
具体的に何がないのかというと本当に多岐にわたります。「稟議フロー」や「昇降格基準」が固まってなかったり、「新入社員向けの資料」という内容から「サービスの売り方などのノウハウ」、なんなら「売れるサービスを自分で作る」といったこともやる必要があります。待っていてもみんな忙しくてやってくれないので自分でなんでも作るという気概が必要になってきます。
「お金」と「人材」も常に不足しています。いくら「〇億円調達しました!」といっても事業で稼いだお金ではないのでどんどん溶けていきます。余裕なんてありません。調達したお金でサービスを磨いて人材を採用してどんどん売上や企業価値を高めないと次の資金調達が難しくなるので、正解かどうかわからない暗闇を常に全力疾走です。正解を探すというよりも選択したものを正解に近づけるように考えながら走り続けるということが大切です。
確かにしんどいことも多いですが、この何もない状態から仕組みや体制を作りながら会社もサービスも急成長させるというのがベンチャー企業で働く大きな魅力だと思っています。この何もないカオスな状況を楽しめる人だけがベンチャー企業に転職をしてもいい人と言い換えることができると思います。
ベンチャー企業への転職で失敗しないために
ベンチャー企業への転職で成功する人は「会社に多くを求めない人」で「自分でどうにかする」というバイタリティーと覚悟がある人だと思います。逆に「会社はなにをしてくれるんですか?」という人は確実に失敗するのでベンチャー企業への転職は考え直したほうがいいと思います。
転職の動機がお金であるならその転職は失敗するのでやめておきましょう。きっと今の職場で働くほうが幸せです。
転職というのは職務経歴含めて不可逆的です。転職してしまったことをなくすこともできませんし、失敗に気付いて元の職場に戻ることも簡単ではありません。運よく元の職場に戻れたとしても転職前の評価ではなくなっています。
この仕事がしたい、この会社で働きたい、この会社にいたら心が壊れるということがない限りは安易な転職はするべきではないというのは転職するうえで非常に大切なことだと思っていますし、ベンチャー企業という急成長する可能性があるとはいえ、非常に不安定な会社に飛び込むのならよほどの覚悟となんでも楽しんでやるという馬力がない限りは後悔する可能性が高いと思います。
逆に言うと、その覚悟と馬力があるのであればベンチャー企業ほど楽しい職場はないのでぜひ飛び込んでみてください。仮に失敗してもきっと誰かが評価して手を差し伸べてくれるはずです。
ベンチャー企業、大手企業、中小企業、零細企業、さまざまな規模の会社があり、他にも業種、業界、歴史のあるなしなど多くの変数がある中でどれがよくてどれがダメということはありません。ブラック企業の定義と同じですね。どんな会社でも合う合わないは必ずあります。ある人にとってのA社は優良企業でも別の人にとってはブラック企業になりえることと同じです。自分の価値観に合った会社を選ぶということはベンチャー企業への転職に限らず、すべての転職における失敗しないために共通する数少ない要素の一つなのかもしれません。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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