差別化のできていない人材系ベンチャーは不況で倒産する

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  • 忍び寄る影
  • 代理店はいくらでも替えがきく
  • リーマンショック

忍び寄る影

人材系ベンチャーに転職をしてからはリピート受注という甘い果実を経験するも、二度と新規開拓オンリーの営業特化型のブラック企業には戻りたくないという強い思いもあり、新規開拓も順調にこなしつつ、毎月の営業目標をクリアしていました。

当時はITバブル崩壊から日本経済も立ち直りつつあり、日経平均株価も18,000円に届くかというような時期でした。いまでこそ30,000円前後まで急伸している日経平均株価ですが、ぼくが社会に出たころには日経平均株価が8,000円前後まで落ち込んでいました。そのころの底の時期に比べると日経平均株価も2倍以上になり、景気はいいという認識でした。

ソフトバンク、楽天、サイバーエージェントなど、いまもなお第一線で活躍を続ける企業を輩出し、成長を後押ししたITバブルの頃にもベンチャーや起業というキーワードがにぎわった時期がありましたが、あくまでベンチャー界隈を中心にした一部が盛り上がっているだけという印象でした。しかし、この頃にはいまほどではないもののベンチャーキャピタルの資金がベンチャーへと大きく流れ込んできており、ベンチャー、起業という言葉がわりと身近になってきた実感があります。

好景気という背景もあり、調子よく新規受注とリピート受注を繰り返し毎月の売上も右肩上がりに上がっていきました。入社した会社は営業特化型のブラック企業ではありませんでしたが、営業力に強みをもつ体育会系の会社でしたので社内の雰囲気はイケイケでした。

しかし、2008年に入ってからというもの少しずつ何かがおかしくなってきます。正確には2007年7月を境に日経平均株価の下落が止まらなかったのですが、その当時はまったく実感がありませんでした。

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代理店はいくらでも替えがきく

2008年1月、2月と2ヵ月連続で本社含めて全拠点が未達成となりました。最初は「1月2月は営業日が少ないからね」といま振り返ると本当に恥ずかしい傷の舐めあいがされていましたのですが、すでに深刻な状況が迫っている状況でした。

3月も後半に差し掛かり、今月も拠点全体が未達成濃厚な雰囲気になってはじめて違和感に気付きだします。

新規受注率や受注単価に変化はないものの、テレアポの打電数自体が増えているにも関わらず新規アポ数とリピート受注数が去年と比較して半減していたのです。

これが何を意味するかというと全体的な採用ニーズの低下です。

新規アポからの受注率が変わらないということはアポにさえなれば受注できるということですので営業プロセスには問題ないことを示していました。新規アポになるということは企業側の採用ニーズがある証拠です。しかし、この新規アポ数が減っているということは全体としての採用ニーズの低下を示していました。

採用を検討していない企業に採用の提案をしてもよほどのことがない限り話を聞こうとはなりません。新規のテレアポをかけてもかけても受付に断られてしまいます。いわゆるモンゼン(門前払い)です。

営業特化型ブラック企業でテレアポでのモンゼンは慣れてはいるものの辛くないかと言われれば辛いです。それでも新規のアポを取るためにはテレアポをかけ続けるしかありません。

基本的にテレアポをかけるためのリスト(営業先)は求人媒体に掲載している企業を上から下まですべて網羅するというのがセオリーでした。求人媒体に掲載されているということは現在求人を行っており、かつ費用をかけることができる企業である証拠ですのでここは最優先でリストアップします。

求人媒体ごとに掲載開始日が異なるので、毎週水曜金曜は「リクナビNEXT」、毎週火曜金曜は「マイナビ転職」とルーチンのようにリストを作っていました。新着求人を見つけたら誰よりも早くテレアポをするのがアポ獲得のコツだからです。なぜなら、最初の1件目の営業電話は採用担当者も「少しは話を聞いてみようか」という気持ちになりますが、同じような営業の電話が10件、20件とかかってくるとすべてに対応していたら通常業務に支障をきたすので、受付に断るよう依頼がされてしまうのです。この受付でのモンゼン対応をされるまでにいかに早くテレアポをするかがアポ獲得の成否を分けていました。

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話を戻しまして、この有力なテレアポリストの材料となる求人媒体への新規掲載社数が日に日に減っていきました。先週3,000件あった求人が今週は2,500件、さらに翌週には2,000件と激減していきました。掲載されているのは年中掲載しているおなじみの営業特化型ブラック企業だけなんじゃないかというくらい急激に新規掲載がなくなっていきました。

営業先は減っていくのに競合となる同業他社は減りません。また、当時所属していた会社は「リクルート」や「マイナビ」など媒体発行元の販売代理店でしたので、利益率が低く何か特別サービスができるわけでもありませんでした。基本的には紳士協定で本体(リクナビNEXTならリクルート)も販売代理店も価格競争含めて特別なサービスはしないとしていましたが、この時ばかりはあまりにも本体に案件が取られるので何かしているのではと疑っていました。事実は結局わからないままなのですけどね。

そんなこともあり、ただでさえ少ない営業先をどんどん本体に取られていき、いままで仕事を定期的に話を持ってきてくれていた顧客さえも数としては少ないながらも本体に乗り換えられるという問題がでてきました。

こちらとしても顧客を取られそうになってるのですから、黙って指をくわえているわけにはいきません。顧客のことを内部事情含めて一番理解しているのは自分だという自負があるので、本体よりも魅力的な提案をしているつもりでした。

しかし、どんな提案をしようが結局掲載される媒体は同じです。まったく違う切り口で圧倒的なメリットが出せていたかというと、いま振り返るとそうではなかったのでしょう。

ある顧客の仲のいい担当者がボソッと「値段がね」と教えてくれました。本体が値引きをしているかどうかを聞いてもそれ以上は教えてくれませんでしたが、言葉通り値段が安いから本体にということだったと理解しています。本体も生き残りに必死だったことは想像できるのでこれは仕方のないことだと思っています。本体が作った媒体ですから本体に有利なルールで動くことは当然だったからです。嫌なら代理店ではなく自社の求人媒体を持ち、本体になればいいだけです。それができないから本体のブランドと求人媒体を借りて代理店営業をさせていただいているのです。

リーマンショック

2008年に入ってからというもの営業成績は低迷をし続け、2008年9月15日に「リーマンショック」が発生したことで決定的なダメージを受けました。2007年ごろからアメリカの住宅バブル崩壊など予兆はあったものの経済ニュースだけでなくワイドショーなどでも大々的に取り上げられたのは間違いなく「リーマンショック」がきっかけでした。

ここから採用ニーズは加速度的に冷え込んでいきました。まず、大口顧客だった上場企業の不動産会社が倒産しました。年間を通じて求人媒体に掲載してくれていた金融会社が媒体への掲載を停止しました。元気なのは営業特化型ブラック企業だけになってしまいました。

結局年間を通じて未達成という不名誉な記録を作り、話は拠点撤退へと進んでいきます。

続きはまた次回。今日もありがとうございました。

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