- 薄利多売のストックビジネス
- 一撃必殺のフロービジネス
- 結局どちらのビジネスが優れているのか
薄利多売のストックビジネス
営業職として転職を検討する中で、継続的に取引が発生するストックビジネスと1回で取引が完結するフロービジネス、どちらのビジネスモデルを展開する企業に応募をするかは慎重に検討することをおすすめしています。ストックビジネスもフロービジネスも一長一短あります。
もちろん、破壊力抜群のストックビジネスもあれば薄利で数で稼ぐフロービジネスもありますが、ここでは一般的な例でご説明いたします。
まずはストックビジネスですが、基本的には薄利で継続的な収益が発生するパターンが一般的です。サブスクリプションなんていう表現が最近の流行りですかね。
個人向けではみんな大好き「Amazonプライム」や「Netflix (ネットフリックス)」もストックビジネスですね。最近では家具や家電、洋服なんかのサブスクリプションも人気です。
一方法人向けとしても「freee」や「マネーフォワードクラウド」、「SmartHR(スマートHR)」などの人気サービスもストックビジネスになります。
基本的な構造としては最初に巨額の資金を投下してコンテンツ(動画や商品、サービス)を充実させてユーザー(対象が法人の場合もあり)から支払われる月額から少しずつ回収していくというイメージが一般的でしょうか。
ストックビジネスは一度導入すると乗り換えコストが高くなるため、新規導入のハードルが一般的に高いこともあり、すでに契約しているサービスから乗り換える強い動機が必要となります。
個人向けサービスが想像しやすいと思うのですが、動画サービスだけでも数え切れないほどのサービスがあります。仮に現在「Netflix (ネットフリックス)」を契約しているとして「U-NEXT(ユーネクスト)」や「dTV(ディーティービー)」に乗り換える(または追加契約する)でしょうか。
よほどみたい映画や好きなアーティストのライブ、スポーツの独占放送などがない限りは乗り換えないと思います。
新しいサービスに登録して決済手段を選択して、元のサービスを解約してと手間がかかり面倒くさいのです。個人向けサービスでも面倒くさいのに法人でのサービスの乗り換えは想像を絶する面倒くささがあります。サービス導入側の担当が「こっちのサービスのほうが便利でコストが下がるから導入したい」と前向きに検討してくれても決裁者が「いまのサービスが使い慣れていて覚えなおすのが面倒だからダメ」なんていうとんでもない理由で乗り換えができないなんてざらです。
また、月額で少しずつ回収していくモデルなので営業担当個人として売上が一気に伸びるということも少なく、「超大手へ導入ができた」「業務提携で一気に取引先が激増した」などがない限りは転職直後にに結果を出して他の営業と差別化することもなかなか難しいです。
ストックビジネスではマーケティングが強い企業に転職することを強くおすすめします。サービス自体(プロダクト)が魅力でもマーケティングが弱いと営業は非常に苦戦します。これはストックビジネスもフロービジネスも同じなのですが、難易度でいうとストックビジネスは圧倒的にマーケティングの影響を受けます。転職を希望する会社はマーケティングが強いかどうかは徹底的に調べたほうがいいです。入社後の営業活動において天国と地獄ほどの差が生まれます。
ここまでストックビジネスの難しさをお伝えしてきましたが、当然ストックビジネスのメリットも大きいです。乗り換えコスト高いということは裏を返せば一度顧客を獲得するとチャーン(解約)が発生するリスクが低いのです。
どういうことかというと来月以降の売上が見込みやすいということです。
これは非常に大きなメリットです。極端な話をすると1ヵ月寝ていても前月と同水準の売上が見込めるのです。精神的に非常に優しいですね。売上がコツコツと積み上がり、ジェットコースターのような推移を描くことはほぼありません。
また、社風的に牧歌的な雰囲気の会社が多く、体育会系でガツガツ稼ごうという社風が苦手な方にとってはおすすめできる会社が多いですね。では、楽かというと知的労働の側面が強くなるというだけで決して楽ではないという点だけご注意ください。どこの世界にも成果が残せない営業に居場所などありません。
一撃必殺のフロービジネス
一方でフロービジネスはどうでしょうか。ストックビジネスが薄利多売ならフロービジネスは一撃必殺です。
ここでは営業特化型のブラック企業に多いフロービジネスをご紹介しますが、ぼくが経験したホームページ制作のリース営業を例にすると1件受注すれば100万円近い粗利益が発生します。1ヵ月に5件も受注すればひと月の給料が歩合込みで100万円を超えるなんてことも可能です。
他にもビジネスフォンやコピーなどの複合機、証券を中心とした金融商品、戸建てや投資を目的とした不動産、広告営業なども一撃必殺のフロービジネスの代表格と言えそうですね。
フロービジネスは基本的に新規開拓がすべてです。もちろん、既存顧客からの追加受注や紹介もありますが、基本的には常に狩りをする必要があると思って間違いありません。
今月いくら売り上げたからといっても翌月は常に0円からのスタートです。どんなトップ営業も安息の日々が訪れることはありません。毎月不安で押しつぶされそうなプレッシャーがあります。
営業の特性上、俗にいうブラック企業の可能性はストックビジネスの企業と比較してググっと上がります。
ここまではデメリットですが、メリットも当然あります。フロービジネスは成果を出せば給料が高いことが多いですし、月末の一発逆転ホームランでヒーローが誕生するのもフロービジネスの特徴です。
ストックビジネスの場合は月末が迫り、営業日が残り僅かとなった場合はその月の達成は非常に困難な状況に陥ります。一方でフロービジネスの場合は月末最終日に超大型案件の受注により逆転達成というようなミラクルが起こることがあります。個人達成はもちろん、チームの状況も一気に変えるような超大型受注です。チームの雰囲気も受注した営業マンもこの時はヒーローになり異常な盛り上がりを見せることがあります。もちろん、順調に数字を積み重ねて達成することが理想なのは言うまでもありませんが、窮地からの大逆転はフロービジネスの醍醐味と言えるかもしれません。
結局どちらのビジネスが優れているのか
では、結局どちらのビジネスモデルが優れているのかという話になるのですが、結論としてはメリット・デメリットがあり、優劣つけがたいということが本音です。
あえて求職者へお伝えすることがあるとすればメリット・デメリットではなく向き不向きがあるというのが最終的な回答になるのかもしれません。
お伝えした通り、ストックビジネスとフロービジネスにはメリット・デメリットがありますので、どちらのビジネスモデルも優劣つけがたいですが、各々のビジネスモデルの企業に入社する場合の求職者側の向き不向きはあると思っています。
「何が何でも稼ぎたい」「営業は売ってなんぼ」「売上で目立ちたい」など体育会系寄りのスタイルを目指したいならフロービジネスの営業を、「顧客に寄り添って長くお付き合いがしたい」「顧客の課題に向き合って深いところまで理解して改善を実現したい」など意義に価値を重視するスタイルや「毎月の売上が安定しないのは怖い」などの安定性を求めるスタイルならストックビジネスがいいのではないかと思います。
どちらが優れているかという観点ではなく、どちらのビジネスモデルが自分の性格やスタイルに合っているのかという点を重視して選択することをおすすめします。
もちろん、社風や扱う商材によりフロービジネスでもストックビジネスでも上記に当てはまらないことはあると思います。応募前や面接時にしっかりと見極めて失敗をしない転職活動をしてくださいね。
今日もありがとうございました。
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